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資本的支出の減価償却

「資本的支出」の減価償却方法は、

原則、既存の本体資産(資本的支出を行った資産)と同じ種類の資産を新たに取得したものと見なし、既存の本体資産とは全く別の資産として減価償却を行います。(固定資産台帳も別々で登録して管理を行います。つまりこれら資本的支出の額も、ひとつの「固定資産(減価償却資産)」として扱います)

例えば・・・

減価償却中の帳簿価額200万円の普通自動車に50万円の「資本的支出」を行った場合、帳簿価額200万円の普通自動車は何もなかったかの如くそのままで減価償却を続け、50万円の「資本的支出」は新たな資産と見なし、支出を行った既存の資産(普通自動車)と同じ種類・耐用年数を用いて減価償却を行う事になります。

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支出時の仕訳例など

事業用車両(普通自動車)に、50万円の資本的支出を行った---

借方 貸方 摘要
車両運搬具 500,000 現金 500,000 資本的支出

事業用車両(普通自動車)に 80万円の修理費用を支払い、内、50万円が資本的支出に該当する支払いだった---

借方 貸方 摘要
車両運搬具 500,000 現金 800,000 資本的支出
修繕費 300,000   ---

※ 80万円の支払時に全額を「修繕費」として計上しておき、12月31日の決算仕訳で、資本的支出の50万円を 「修繕費」から「車両運搬具」へ振り替え処理する事も可能です。(借方・「車両運搬具」 / 貸方・「修繕費」)

※ その他台帳などの記載例は、国税庁の確定申告の手引き等をご参考に。

例) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2015/pdf/36.pdf (あくまで記載例です。ページ下部参照 /2015年度分・国税庁HP資料より)

減価償却方法・計算例

上記例の資本的支出(50万円)を6月10日に行った場合(耐用年数5年)。

⇒ 当期の減価償却費。(定額法) 500,000円 × 0.2 × 7/12 = 58,333円

借方 貸方 摘要
減価償却費 58,333 車両運搬具 58,333 ---

⇒ 次期以降(2年目〜5年目)の減価償却費。 500,000円 × 0.2 × 12/12 = 100,000円

借方 貸方 摘要
減価償却費 100,000 車両運搬具 100,000 ---

⇒ 6年目の減価償却費。 残りの 41,667円

※ 固定資産の減価償却では、最終的に資産の存在を残すという意味で備忘価額(残存価額)を1円だけ残すようにしますが、資本的支出の場合には母体(本体)となる固定資産が存在しますので、資本的支出の減価償却では「1円」の備忘価額は残さなくても良いはず・・・(私見)

借方 貸方 摘要
減価償却費 41,667 車両運搬具 41,667 ---

「資本的支出」という言葉を難しく考えずに、減価償却資産がひとつ増えた!  ・・・と考えて償却を〜 ^^)/


母体(本体)となる固定資産の減価償却は、償却中に資本的支出があっても、償却方法や価額などの変更・処理は一切何も行いません。 本体の資産は今まで通りの減価償却を続けて下さい。


平成19年4月1日以降に行った資本的支出は、原則「定額法」「定率法」での減価償却になります。

資本的支出を行った母体(本体)資産の減価償却方法が 「旧定額法」「旧定率法」であっても、平成19年4月1日以降に行った資本的支出は全て、「定額法」「定率法」 によって減価償却を行います。(特例を除く)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/2-12.pdf (国税庁PDF資料)

※ ページ内の「設例」は「定率法」 になっていますが、考え方は基本、「定額法」も同じとお考え下さい。(原則部分を参照)

それと〜 もともと中古資産であって、かつ減価償却されていた資産に対する資本的支出に関しましては、その資本的支出の額によっては・・・ 耐用年数などに規制? ある可能性もありますので、もしその資本的支出が中古資産に対してのモノであるならば、一応念のため所轄の税務署窓口などでご相談されます事をオススメしておきます m(_ _)m

※ 法人税法では、その資本的支出の額が、支出先となる中古資産の「新品再取得価額(もし同じモノを新品で買った場合の価額)」の50%超となる場合には、中古資産の耐用年数が変更されてしまうような制度があり・・・ ただ私が調べる中では、それらと同様の制度は所得税法では見られないものの〜 また所得税法におきましても、フィーリング的にそれら近似するような何かの存在を感じますもので。。

※ 尚、中古資産の取得と同時に行った資本的支出は〜 こちらをご参考までに 「⇒ 改良や改装を加えた中古資産の減価償却など


Q. 資本的支出が30万円未満の場合、「少額減価償却資産の特例」は適用可能ですか?

A. 資本的支出の額は適用外です。

売却・徐却

資本的支出の減価償却中に、母体(本体)となる固定資産を売却・徐却した場合にはどうなるのでしょうか・・・。

母体(本体)の固定資産と合算して処理します。

売却・徐却による帳簿価額 損益も合算して仕訳をしましょう〜 ^^)/

「原則」の減価償却では、本体資産と資本的支出は全くの別管理になってしまいますので、本体資産の売却・徐却時に、付随する資本的支出の処理も忘れないように、関連させた管理が出来るようなシステムを考えておきましょう〜 ^^

特例

平成19年3月31日以前に取得した資産に対する資本的支出は、「特例」として、母体(本体)の減価償却資産の取得価額に加算処理(合算処理)する事も出来ます。

つまり、母体(本体)と資本的支出を合わせてひとつの減価償却資産として取扱う事が可能です。

但し、特例を適用して資本的支出の償却処理を行った場合には、以後の事業年度において、「原則」に従った償却方法へ変更する事は出来ません。


「特例」を適用して資本的支出の減価償却を行う場合には、資本的支出を行った当期においては 支出日による月割処理が必要になりますので、実質的に合算処理になるのは次期の減価償却費の処理からになります。

資本的支出を行った当期においての減価償却処理(例)】
※ 耐用年数5年・定額法の資産(200万円)へ、6月において資本的支出(50万円)を行った場合。

(資本的支出)        500,000円 × 0.2 × 7/12 = 58,333円

(資産の本体)        2,000,000円 × 0.2 × 12/12 = 400,000円

当期においての減価償却費 = 458,333円
次期においての減価償却処理

(資本的支出 + 本体)   2、500,000円 × 0.2 = 500,000円

当期においての減価償却費 = 500,000円

ちなみに、「旧定額法」「旧定率法」による5%相当額の5年均等償却中に資本的支出を行った場合には・・・

母体(本体)の帳簿価額と資本的支出の額を合算した帳簿価額が、その減価償却資産全体の取得価額(資産本体と資本的支出の取得価額の合計)の5%相当額を超えるのであれば、5年の均等償却は適用せず、

今まで行ってきた減価償却と同じ償却方法を用いて(旧定額法や旧定率法)合算償却し、

合算した帳簿価額が減価償却資産全体の取得価額の5%相当額に達した事業年度の翌年から、5年均等償却を適用します。

 『ちょっと予備知識
その他、定率法採用によるその他「特例」 などもあるのですが、(定率法を採用している場合にのみ適用可能な、資本的支出に関する特例)

私も含め、SOHO系の事業者で定率法を採用している方は少ないようですし、「原則」での減価償却の方がお得なようなので(原則の方が償却額が多くなるので)、ここでの「特例」についての説明は、以下省略させて頂きます ^^

※ 念のため・・・その他の「特例」については https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2107.htm こちら国税庁サイトを。

尚、当該 「定率法」採用限定の特例に関しましては、平成23年度の税制改正にて(施行は平成24年4月1日)、定率法の償却率等の見直し等により〜 合わせ特例の適用範囲が限定されるなどしておりますので、予め、かつ念のためご留意願います。

一言・補足

資本的支出の帳簿処理は、資産本体の状態によっても変わります。

減価償却中の資産の一部を取り壊して資本的支出を行った場合など、帳簿の仕訳や減価償却が複雑化する事もありますので、

明らかに単純な資本的支出以外は、最寄の税務相談等へ一度相談される事をオススメします ^-^)/

とまあちょっと長々ゴチャゴチャになってしまいましたが、

以上参考までに。 また皆様のお役に立てる部分御座いましたら幸いです m(_ _)m


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