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短期前払費用の特例

前払費用の中でも〜 一定範囲内にある ”短期” のものは、ちょっとした特例を受けられることも。

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その短期の前払費用とは?

サービス(役務の提供)の対価を支払ったその日から、1年以内に役務の提供を受けられる前払費用を「短期の前払費用」と言います。 (「短期前払費用」も同じ)

例えば契約期間が1年間の保険料を6月1日に支払ったならば、

次期(翌年)の1月1日から5月31日までの補償期間の対価が「短期の前払費用」となります。


Q. この「短期の前払費用」には、何か特別な取扱いがあるのですか?

A. あると言えばあるが、無いと言えば無いです。

なんかようわからん。

つまり、特別な扱いをしようとすれば特別扱いが出来ますし、特別な扱いをしたくなければ通常の「前払費用」のままで「OK」というわけ。

ちなみにこの「特別な取扱い」の事を「短期前払費用の特例」と言い、使い方によっては仕訳が簡単に済ませられて節税のオマケまで付いて来ちゃうとても魅力的な「特例」だったりも (^m^)

言うなれば カモがネギを背負って鍋の中で寝ているような特例とも。

※ まあとは言っても、厳密に言えば扱いは絶対的自由ではありません。ちなみにそれら厳密なところに関しましてはまた後程にて。。

その特例とはどんなん?

なんと! 「短期の前払費用」は、

役務提供の対価を支払った日に、支払った対価の全額を必要経費に算入する事も出来るのです!

契約期間が1年間の保険料を6月1日に支払った場合、

通常の「前払費用」の扱いであれば、当期の決算において 次期に提供される役務の対価(翌年の1月1日〜5月31日までの役務の対価)を「前払費用」として資産計上する必要があるのですが・・

借方 貸方 摘要
損害保険料 7,000 現金 12,000 ---
前払費用 5,000   ---

※ 月額が1,000円の保険料として計算。

こんな感じ↑ (まあ一例です。【⇒ その他パターン例】) いわゆる 「正規の簿記」による仕訳とも。

もし「短期前払費用の特例」を適用するのであれば、

次期に提供される役務の対価も全て支払日の必要経費として認められるのです!

借方 貸方 摘要
損害保険料 12,000 現金 12,000 ---

↑こんな感じで「OK」になる。

もちろんその後〜 決算時における「前払費用」へ振り替える仕訳なんてのも必要ありません ^-^)ノ

単月(or 1年分づつ)で支払っている家賃とか、

※ 家賃はそもそも〜 常に翌月分の前払い という特徴がありますので、もし12月の末に支払われた翌1月分の家賃であるならば、原則的には、その12月に支払われた家賃は当期においては「前払費用」として処理する必要があるのですが・・・

しかしこの「特例」を適用する事により〜 そういった繰り越し処理も必要ない! というわけ ^^ 【⇒ 仕訳例

また自動車保険など、1年更新の損害保険などが適用できますね〜 ^^

※ 最近の自動車保険は、契約始期の月末に口座引き落とし・・・という所が多いので、ほとんどの場合が適用出来そうです。(契約始期日前の決済だと役務提供が1年以内に受けられないので、特例の適用を受けられなくなる。なおこれについてはまた後程でも)

但し、口座引き落としが翌月などになる契約などでは、その翌月が翌年1月であれば〜 翌年の必要経費となってしまいますので、これら予めご注意のほどを。(経費計上のタイミングは、契約日ではなく「支払日」ですから。。)
 参考(国税庁HP): https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/09.htm (37-30の2・「短期の前払費用」を参照)

但し!

これら特例を適用するためには〜 またその適用が認められるためには〜

「短期の前払費用」としての条件が満たされていることは最低限であることと、

※ つまり、短期の前払費用なら何でも特例が適用出来る・・・ というわけではありません。

かつその費用が、色々な適用条件に適合していてはじめて〜 適用する事の出来る特例ですので、

一応念のため。。

 適用条件その1、 短期の前払費用である事

もう一度!

 サービス(役務の提供)の対価を支払ったその日から、1年以内に役務の提供を受けられる前払費用を「短期の前払費用」と言います。

主に 「1年以内」・・・ という所がポイントとなろうかと。

ちなみに以下のような場合(例)には「短期の前払費用」にはなりませんので、「特例」の対象外となります。

十二分に注意しておきましょう〜 ^^

@サービスの対価を支払った日が6月1日で、契約期間が6月1日〜翌年の6月31日。

※ 1年以内に役務の提供の全てが完了しない契約は対象外です。

Aサービスの対価を支払った日が5月1日で、契約期間が6月1日〜翌年の5月31日。

※ 支払った日から1年以内の提供完了が条件です。保険料の前払いには要注意。

B2年の契約期間があり、支払日から1年以内に役務の提供を受けられる対価を「短期の前払費用」とし、1年を超える対価を「前払費用」として記帳処理。

※ 支払日から、役務提供の終了までが1年以内の契約のみが対象です。

また一年以内うんぬんの前に。。

Cそもそも 「前払費用」の対象条件は、「一定の契約に従って、継続的に・・・」 というのが条件ですから、、今まで月払いにしていた家賃などを、契約の更新を行わずにいきなり年払いで支払った場合には「短期の前払費用」とは言えず、また特例も適用する事は出来ないでしょう。

ちなみにもし月払いの「前払費用」を年払い等へ変更したいと考える場合には、今まで「月払い」だった一定の契約条件を「年払い」へ条件を改める「再契約」や「契約の更新」等が必要となりますので、予めご熟知頂きたく思います。

※ 但し、それら動きが大きな節税目的など・・・ 故意性の高いものであって、(更新時期じゃないのに更新するなど・・・ 故意的すぎる節税とか) なおかつ税務署側から見ても「重要性の高い」モノとして取り扱われてしまう場合には、こういった更新あってもそれら特例が認められない可能性もあるでしょう。(これら重要性とか故意性とかに関しましては〜 まあ後程。。)

Dもちろん! 前払いでなければ〜 前払費用にも短期の前払費用にもなりませんので、当然その特例を受ける費用は 実際に対価が支払われている費用(カード決済は可)に限られますが。。

※ 今期からなんとしてでも経費算入したいので、「契約したその日に〜 前払費用をツケで処理・・・」とか、意味不明な会計処理は絶対に不可  A^-^;)

尚、クルマの購入時に同時加入契約する自動車保険とか、その費用の取扱いがやや複雑となろう場合には〜 ⇒ こちら をご参考までに)

Eまた、もっともっと前提的に「前払費用」に相当する費用でなければ〜 対象となりませんので、その契約期間がいくら1年以内だとしても、その費用が前払費用とならないのであれば・・・ それら費用もこれら特例の適用を受ける事が出来ないでしょう。

※ 例えば、一定の契約期間こそあるものの〜 そのサービスの提供は 期間中かなり断片的であるもの等。(断続的なCM広告費など)

 適用条件その2、 一貫性を厳守出来るもの。厳守する事

特例を適用した場合(する場合)には、もちろん!今後の記帳に一貫性・継続性を持たせなければいけません。

※ ここは簿記の基礎中の基礎、基本中の基本ですからね・・・

例えば・・・

家賃を年払いへ契約更新し、向こう1年分の家賃を一括して支払い、全額を当期の必要経費へ計上した場合には、、次期以降の家賃も一定して年払いを継続しなければいけません。

「前年度は景気が良かったので1年分を前払いして節税。今年は大きな買物をしてしまって資金不足なので、契約の更新をして月払いに戻そう〜」

・・・というのはダメ!です。

これらは大いに「一貫性の原則」に反する会計。そもそも簿記・会計処理として問答無用にダメですね。。

ちなみに〜 もしどうしても経営上 継続性が保てそうにない場合には・・・

その場合には、その点は「事業上とても重要性高い部分」として見られようかと思われ、

どんな理由あっても、「正規の簿記」による会計処理だけは徹底しなければならないでしょう。(尚、ここでも出てきましたが〜 これら重要性とかに関しましてはまた後程。。)

 適用条件その3、 許容範囲と重要性の原則

特例適用の許容範囲について。

え〜 これまでは、特例についての「原則的」な方向・見解から解説させて頂いてきましたが、

ただこれら特例も、ある意味 「経理処理負担の軽減」のための一策でして、これら特例の概要から一歩でも! 要件を踏み外してしまうとこれら短期前払費用の特例の適用を受ける事が出来ないのか!? ・・・と言いますと、

そこはかなりのグレーゾーン。

適所適材、かつ柔軟に対応されている事実があるということも現実。

例えば・・・

契約期間が平成24年1月1日〜 翌年の平成25年1月1日までとか、契約期間が1日だけ、1年を超えてしまうような場合。(支払日は1月1日)

この場合、本来原則的な見解から見ると〜 ここで言う「特例」の適用を受ける事が出来ませんが、

ただ現実下におきましては、税務署自体、これらある程度の許容の目で柔軟に見ているそうで、短期前払費用の特例を適用されていても何ら問題にならない事もあったり、

また支払日の焦点につきましても、

契約期間が平成24年1月1日〜 平成24年12月31日までで、ただその契約に関する費用を平成23年12月末に支払った場合。

この場合も、本来原則的な見解から見ると〜 ここで言う適用を受ける事が出来ませんが、

ただ現実下におきましては、税務署自体、これらもある程度の許容の目で柔軟に見ているそうで、特例を適用されていても何ら問題にならない事も多々あるようです。

実際、家賃なんかはそもそも〜 基本、契約期間の前払い(前月の末日払い)が一般的ですし、

またその他、保険料などをクレジットカードで支払う場合などでは、保険会社や保険契約などの性質上、その保険の保険始期日より前に指定のクレジットカードから決済処理される事も多く、

ちなみにこの場合、私が税務署窓口へ直接たずねたところ・・・

例えば、平成24年11月1日からの1年契約の保険料(自動車保険)を、その保険契約の条件上〜 平成24年10月の初旬頃に決済処理された場合、その10月の決済処理時にその1年分の保険料を一括経費化しても問題ない との回答が返ってきました。
(つまり特例を適用してもOK! と)

またそのクレジットカードでの支払い概要は、平成24年10月の初旬頃に決済処理され、また決済分の口座からの引き落とし日は翌年平成25年の1月末なんですが・・・

この場合、その一括経費として計上するタイミングは、会計原則 「一貫性」さえ厳守していれば〜 平成24年10月の決済日でも、平成25年1月の引き落とし日のどちらでも問題ないとの回答まで付いてきました。

但し!

こういった許容の目、柔軟な目がある一方で、

逆に特例の適用に適さない見解で迫られるパターンもあるそうで。。

※ つまり、これら短期前払費用の特例の適用において、グレーゾーンも踏むことなく規定や条件、概要や注意点をしっかりと熟知し厳守し適用していても、その適用を「否定・否認」されてしまう場合もある! という事。

その根拠が〜

これら短期前払費用の特例自体、「企業会計原則」による・・・「重要性の原則」に基づいて 税務上でも認められた特例であるという事。

※ 重要性の原則 = 重要性の乏しいモノであれば・・・本来の厳密・正式な方法などによる会計処理でなくとも、簡易的な方法などによる会計処理でもOK。。 といった、例外的な会計処理を認める原則。

ちなみに〜 企業会計原則は法律ではありませんが、現在日本における会計基準・ルールの大変重要な「規範」でもある存在で、ただそれら基準は〜 必ずしも税務上で認められるとは限らないようですが。。

つまり・・・

その特例の適用内容・部分が、その個人事業主の実務上(経理処理や営業上など)において 大変重要な部分と考えられる場合においては〜

それら特例の適用は出来ない。 適用対象外。。。 という事。

ちなみにその「大変重要な部分と考えられる部分」につきましては、

まあそうですね。。

営業取引き上によるものは当然だとして、後は・・・

※ 営業上、直接売上げや仕入れに反映。

金額的な面や収益とのバランス!?

その他、その費用の実質的な性質など・・・・・・・ ごにょごにょ△*□%○#・・・・・・

う〜ん。 まあはっきりと言いまして、ここらへんはあまりにも正確なライン引きがなく、中途半端感バリバリってな感じゾーンとでも言っておきましょうか。

コレ! といった正確なラインをピンポイントで解説する事は不可能で。。

まあつまり、

税務署から見て「OK! 許容範囲」とされるモノであれば ”OK” で、

税務署から見て「NG! 認めない」とされるものであれば ”NG” なわけで・・・

上様の「○○次第」的な要素も少なからず。。

例えば、まあかなり大げさに言うなれば・・・

全く同じサービス料だとしても、A社ではOKで、B社ではNG・・・ なんて事も、

また、判断する側の税務署職員によっても、A税務署の職員BさんはOKと思っても、C税務署のDさんはNGと判断する・・・ なんて事も、可能性としては十分ある話だという事です。

てな具合なんですがね。。

というわけで!?

まあつまりは、この「特例」という実務自体、その実態を正確にとらえる事は難しく

「優しい柔軟な目」がある一方で「厳しい冷静な目」も持ち合わせておりますので、

またその判断を素人目で判断する事も非常に難しい事などから、

もし、これら特例の適用をこれから・・・ と 検討されている場合におきましては、先ずは最寄、又は所轄の税務署窓口などでご相談されておかれます事をオススメしておきますね ^^

※ 「短期前払費用の特例」は、年間のサービス(役務の提供)の費用を一括経費化出来る節税性高い面がある一方で、(節税性につきましては後程) ただもしその一括経費化が否認されてしまったなら・・・ 後から巨額? な修正申告の可能性さえ考えられる「大きなリスク」的な面をも持ち合わせておりますので。。

節税効果のほどは?

この特約を上手に使いこなせば、当期において必要経費となる費用が多くなりますので、

節税対策としても大きなメリットがあるはずです。

例えば・・・

月々1万円の月払いにしていた損害保険料を、当期6月の契約更新で年払いにすると。。

当期の1月〜5月までの月払い分と、6月に支払う1年分の前払費用が全て必要経費と認められますので、

5万円 + 12万円 = 17万円 の保険料が当期の必要経費へ算入できるのです!   \(^u^

もし6月の契約更新で、今まで通りの月払いを続行していた場合には、

当期に必要経費となる保険料は12ヶ月分の12万円でしたから、

5万円の必要経費の差額が「節税」へ繋がったわけですね〜 ^^

また新規の契約においても同じ事が言えます。

6月に保険の新規契約を行った場合、月払い契約であれば「7ヶ月分」、年払い契約であれば「12ヶ月分」の保険料を当期の必要経費へ計上出来るわけですから、

誰が何と言おうが 「節税効果あり!」 です  \(^v^)/

但し!

短期前払費用の節税効果は、一括で前払いをした「当期」のみ有効な手段ですから、

業績が向上しそうな年度のために「ココ一発の節税ウエポン」として温存しておく方が節税効果がより高くなるでしょう。

業績がイマイチの時に「ココ一発の節税ウエポン」を使ってしまうと、翌年から一括の前払いがキツくなって資金不足・・・なんて事も。

特例のご利用は計画的に ^-^)/

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