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前払金(前渡金)、前払費用

まえばらいきん、まえばらいひよう。

前払金は「前渡金」とも。(一般的には前渡金の方が主流ですが、会計ソフト等では前者のケースが多く見受けられますので、、 ここでは基本的には前払金で解説させて頂いております)

ところでこの「前払金」と「前払費用」。 何が違うの? それとも同じ意味?

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これら2つの勘定の違い

勘定科目も同じ流動資産に属し、どちらも「先払い、前払い」という意味があります。

「先払い、前払い」には色々な物がありますよね〜。

家賃や駐車場代は翌月分の前払いが基本ですし、保険や保証も前払い、商品を買うときに支払う手付金も前払いです。

ザザ〜ッと考えてみても、サービスの対価で支払われているお金もあれば、物品の購入に先立って支払われたお金もあります。 翌月1ヶ月分だけの支払いもあれば、年単位の長期に渡るサービスへ支払われるお金もありますよね〜。

ちなみにこれら挙げた「前払い」は、ここでいう2つの勘定のどちらかに振り分けられるわけで。。

※ 細かく言えば何種類かに分類されますが、ここでは大きく分けて2つということで。(この辺り細かくまではまた後程)

何が違うの? どう使い分けるの?

前払費用

一定の契約によって、継続的に役務の提供を受ける為に支払った費用の内、当期中の決算までに提供を受けられなかった役務に対する費用(対価)の事です。

※ 支払行為が無い場合には、それは前払費用でもなんでもありません。

わからん。

もっと噛み砕いて、、

役務の提供』というのは、有償で行われるサービスの事を言います。情報提供や清掃クリーニング、保険や保証料などが該当しますよね〜。

ネット上のものであれば、ドメインやレンタルサーバー費用も該当するはずです。

・・・で、

一定の契約』&『継続的に』 という所がポイントです。

『一定の契約』&『継続的に』・・・という事は、契約に従い、もしくは契約期間中にず〜っと継続的に、かつ同じサービスの提供が行われるものであって、その時だけ一瞬だけのサービスは含まれないという事です。

※ 但し、ここで言う継続性とは、その後の継続性までの広義な意味まではありませんから、いわゆる 「今回だけでも、毎日かつ複数日間に渡って同じサービスを均等に・・・ であれば」という意味合いで取られても問題はないかと思われます。

・10年間の損害保険 ⇒ 「含まれる

・年払い、又は月払いの自動車保険 ⇒ 「含まれる

・毎月支払う家賃 ⇒ 「含まれる

・一定期間だけで契約される広告宣伝費 ⇒ 「含まれる

但し、その広告宣伝費の内容によっては、含まれないとされる場合も有り。

※ ただその場合は、その費用化(必要経費への算入の仕方)の基準もやや難しくなるので、所轄の税務署などでご相談を。。

・来年に行ってもらう事務所のクリーニング清掃費 ⇒ 「含まれない

・ワンデー・インシュアランス (いわゆる1日保険) ⇒ 「含まれない」 (継続性がないので)

・契約あるが、断続的に提供される広告宣伝費 ⇒ 「含まれない

サービス内容が毎日同じでないので〜 継続性あるとは言えず、またそういった費用に関しましては、前払金として資産計上後、そのサービスが行われる都度に断続的に費用化するなどの会計処理が必要とされるでしょう。(CM放映日に、その相当分だけ必要経費に算入するとか)

・雑誌や新聞など、物品の定期購入品 ⇒ 「含まれない」 (継続性はあってもサービス「役務の提供」に該当しないので)

そして『当期中の決算までに提供を受けられなかった役務に対する費用(対価)』は、

例えば、1年以上の契約で加入した保険で、当期中のサービス分(補償)を除いた次期以降に提供を受けられる予定の役務(補償)に対する費用(対価)の事です。

図で説明した方が簡単ですね〜  く(^o^A"

もし保険期間が18ヶ月で、保険料が18,000円、契約日が7月1日だとしたら・・・ (保険始期日も7月1日)

18ヶ月分の保険料は18,000円、1ヶ月当たりに換算すると月額1,000円。

契約日が7月1日なので、当期中に役務の提供を受けられる対価は、7月、8月、9月、10月、11月、12月 ・・・の6ヶ月分! 6,000円!

この6,000円は当期の必要経費となるので、損害保険料として必要経費へ。。

そして次期以降の12か月分の保険料〜 12,000円!

そうです! これが「前払費用」なんです!

※ 前払費用として一旦資産計上されるので、(必要経費の計上ではない) その分は当期の必要経費になりません。

これらを仕訳にするとこんな感じに。

借方 貸方 摘要
損害保険料 6,000 現金 18,000 ---
前払費用 12,000   ---

尚、支払日が保険始期日よりも前であったなら〜 その支払日に上記仕訳を行いますが、

ただ前払費用の額などの計算は・・・ 保険始期日よりの計算となります事には十分ご留意願います。

※ 保険始期日 = 保険 (補償)という役務の提供が始まる日。

また支払日とは、あくまで現金による支払いが行われた場合だけでなく、その対価とされるモノの発生(クレジットカードを切ったとか)があった場合でも、その日を支払日とします。

 勘定科目辞書: 前払費用

 
 なお会計上では、当期から3年目(翌々年度・次期の翌年度)以降に提供されるサービスの対価は「前払費用」ではなく、「長期前払費用」として取扱います。(詳しくは次のページにて

 前払費用を計上した後は・・・

当期で「前払費用」へ計上したサービスの対価は、次期(翌年度)においては「前払費用」とはなりませんから、

次期の期首(1月1日)の仕訳で・・・

借方 貸方 摘要
損害保険料 12,000 前払費用 12,000 ---

前年度に「前払費用」として計上していた資産 (保険料など)を経費へと振り替える(必要経費となる勘定科目へ振り替える)処理が必要です。


 支払った日から保険の契約期間が始まらなくても、次期(翌年度)から保険契約が始まる費用についても「前払費用」でOKです。

 「前払費用」は経過勘定の科目なので、役務の提供が期末において開始されない契約は「前払金」として処理する・・・という意見もありますが、どちらの場合でも税金の誤差は生じませんので、私は「前払費用」として処理します ^^ (国税・税務署が最終的に必要とするのは、正しい税額ですから。。)

前払金(前渡金)

商品の仕入れに伴う「手付金」や「申込金」、

継続性の無いサービス、(その日その当日だけのいわゆる単発一瞬的なサービス。例えばホテルの宿泊費とか)

※ 但し、支払った時点で役務の提供が始まるサービスは前払金の扱いにはなりません。

備品や資産など、そもそもサービスなどに該当しないであろうモノに前もって事前に支払う料金・費用の事を言います。

「前払費用」とは全く違う意味をもっている勘定科目です。

まあもっとも簡単に言うならば、

上記「前払費用」のグループ? に当てはまらない前払い分を「前払金」とも。

※ 但し、前払金の取扱いは思っているより限定的であったりもしますので、それら詳しい概要などにつきましては・・・ 「⇒ 前払金」 ←こちらを m(_ _)m

仕訳例にすると?

前払金には「前払費用」のような年度基準はなく、商品やサービスに対して前もって事前に支払った時点で「前払金」の勘定科目を用います。

@ 手付金(内金)を払って、販売商品の取り寄せ注文をしました。

借方 貸方 摘要
前払金 10,000 現金 10,000 ---

A その注文していた商品が入りました。(残りは現金で支払い)

借方 貸方 摘要
仕入高 50,000 前払金 10,000 ---
  現金 40,000 ---

※ 計上していた前払金を仕入高へ振りかえ、残金は現金で補充・・ みたいな解釈。


Q. もし商品代金を全額前払いした場合には、支払日に経費計上してもいいですか?

A. 「NO」。 税法上では事前に商品代金やサービス料金を支払っていても、支払った費用を経費に算入出来るのは実際に商品の引渡しやサービスが行われた日になります。 必ず「前払金」を立ててください。

※ 尚、追記までに・・・

前払金は資産の勘定科目なので、支払った時点では仕入高や必要経費などにならず、振り替えた時点(商品などを受け取った時点)ではじめて経費などになる事にもご留意ください。(前払費用についても同じ)

 ちょっと予備知識

未完成の固定資産など、これから制作される建物や機械に支払った手付金や申込金は、

固定資産に属する「建物仮勘定」という勘定科目を用います。

ちなみに制作中の大規模なソフトウェアに支払った申込金などは、無形固定資産に「ソフトウェア仮勘定」を作って仕訳をすればいいかも。(私見)

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