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前払費用の定義

ややこしい実務シリーズ。 前払費用の定義は??

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企業会計原則より

先ず「企業会計原則、経過勘定項目 注5−1」では、「前払費用」の事をこう記しています。

前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。

従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。

また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。

ハイ。何言ってんのかサッパリですが、

⇒ 前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。

前払費用とは・・・

損害保険や保証、家や駐車場といった、一定の契約条件で継続性のある有償サービスを受ける場合、サービスの未経過部分に対して先払いとなっている費用の事です。

※ 尚、ここで言う継続性とは、その後の継続性までの広義な意味まではないと思われ、いわゆる「今回だけでも、毎日かつ複数日間に渡って同じサービスを均等に・・・ であれば」という意味合いで取られても問題はないかと思われます。

例えば家賃。

5月分は4月に支払う・・・基本的には前払いですよね〜。

しかし、4月に支払った5月分の家賃は、4月においては「借りる」 というサービスの提供をしていない状態なのです。

サービスの未経過部分に対して支払っている費用 = 5月分の家賃、

つまりこの場合には、5月分の家賃が「前払費用」という事です。

例えば損害保険。

契約期間が2年の保険でも、2年分の保険料を前払いしますよね〜(分割を除く)。

契約後、「保険」というサービスの提供を1年間受けた場合、残りの1年分に支払っている保険料はサービスの提供が行われていない状態です。

サービスの未経過部分に対して支払っている費用 = 残り1年分の保険料、

つまり、この場合には、残り1年分の保険料が 「前払費用」 という事です。

※ 尚、その保険が1日単位で掛け捨てなど定期性や継続性の無いモノであって、さらにその契約実行日前に、前もって保険料が支払われた場合には〜 (先払い) その保険料は「前払金」として実務処理を行う事になるでしょう。(継続性のないモノなので、これらは「前払費用」の対象とはなりません)

なるほど〜。

と、言いたい所ですが、続きがあります。(最終結論はまだ先です!)

⇒ 従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。

簡単に訳すと・・・

従って、サービスが提供されていない未経過部分に対して支払っている費用は、時間の経過とともに次期以降の費用(経費)となりますから、次期以降に費用(経費)となる部分は損金(必要経費)へ算入せず、資産として計上して下さい。

もっと簡単に・・・

次期(翌年度)以降にサービスの提供が行われる部分に対応している前払費用は、決算書(賃借対照表)の「資産」として計上して下さい。

さらに噛み砕いて説明すると、

次期以降に対応する前払費用は 「資産」 へ計上する。

との事です。

勘定科目の「前払費用」は流動資産に該当する科目ですから、

決算時において「前払費用」として計上されている費用は、「次期以降にサービスの提供が行われる対価」という事です。

「前払費用」として扱う費用は、「一定の契約に従い、かつ継続的にサービスの提供を行う対価」ですから、費用の支払時には、次期以降にサービスの提供が行われる対価が分かるはずです。

という事は、

決算日ではなくても、次期以降にサービスの提供が行われれる対価だけを「前払費用」として前もって仕訳をする事が可能ですから・・・

「前払費用」 = 「次期以降に提供を受けるサービスの対価」

・・・で考えた方が、仕訳がゴチャゴチャせずに済みそうですね〜 ^^

法令解釈通達より

ちなみに、国税庁の資料「法令解釈通達(法第37条30の2)」では、

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/09.htm

(短期の前払費用)において、「前払費用」の事を、、

一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。

前払費用の額はその年分の必要経費に算入されない。

と、記載しています。

※ 尚、これら国税庁の法令解釈通知では、前払費用の特例について記しているものですが、ただこの場では、その「前払費用」自体の解釈部分にだけ触れておき〜 それら”特例”に関する部分につきましてはまた後程。。。 という事で m(_ _)m

「12月31日においてまだ提供を受けていない役務」・・・とは、「次期以降において提供を受けるサービス」ですから、

「前払費用」 = 「次期以降において役務の提供を受ける対価」 と、断定していますね〜 ^^

・・・という事で、

「前払費用」とは。 一定の契約、かつ継続的なサービスに支払った費用で、期末においてまだ提供を受けていないサービスに対する対価。 (次期以降に提供を受けるサービスに対する対価)

これが私の「前払費用の定義」です。

その他前払費用の特徴

時の経過とともに役務、及び費用が消化されるので、もし中途解約などした場合には、残りの未提供と考えられる役務の部分に対する費用が返還されるのが一般的。 つまり支払いとともに全ての役務の提供は完了していないとも。

こんな感じです ^^

※ 尚、企業会計原則は〜 あくまで日本の会計基準・会計ルールの規範だが、ただこれら企業会計原則による実務(経理処理)であっても、それらが税務上(所得税法等)で必ずしも認められるとは限りませんので〜 これら予めご留意のほどを。 (まあとは言っても、実際には・・・よほどのことが無い限りこれらの心配は無用なんですけどね ^^ まあ一応余談程度までに m(_ _)m)

また、先ほど先述させて頂いた事例を引出してくると〜

例えば家賃。

4月に支払う5月分の家賃は〜 その役務は「5月」に提供されますので、ここで言う「前払費用」にはなりません。

但し、12月に支払う翌1月分の家賃は・・・ その役務の提供は 「次期以降」となりますので、

この場合の1月分の家賃は「前払費用」というわけですね ^^

例えば損害保険。

2年契約の保険にて、6月現在でちょうど保険始期日から1年目・・・ といった場合、

残る保険期間1年のうち〜 当年度の7月から12月分 (6ヵ月分)に対する保険料に関しては、当年度(当期)において役務の提供が受けられる事となっておりますので・・・

もちろんここで言う 「前払費用」にはなりません。

但し、翌年の1月から6月までの残り6ヵ月分に対する保険料に関しては、それら保険料の役務の提供は 「次期以降」となりますので・・・

この場合の6ヵ月分に相当するであろう保険料は「前払費用」。 というわけですね ^^

仕訳例

例えば、保険料を前払いした場合には・・・

 パターン その@

支払った保険料の費用を一旦計上し、

借方 貸方 摘要
損害保険料 現金 ---

決算において、当期では提供されなかったサービスの対価を「前払費用」へ振り替える。

借方 貸方 摘要
前払費用 損害保険料 ---

 パターン そのA

支払った保険料を前払費用へ計上しておき、

借方 貸方 摘要
前払費用 現金 ---

決算において、当期にサービスの提供を受けた対価を必要経費に算入する。

借方 貸方 摘要
損害保険料 前払費用 ---

 パターン そのB

保険料を支払った時点で、サービス提供の対価を次期分(前払費用)と当期分(損害保険料)に分けて費用を計上する。

借方 貸方 摘要
損害保険料 現金 ---
前払費用   ---

決算時には、次期以降に提供されるサービスの対価が「前払費用」として資産計上されていますので、仕訳は上記3点のどの方法で仕訳をしても問題はありません。

但し! 仕訳に一貫性を持たせる事は忘れないように〜 ^^)/

ちなみに・・・

「前払費用」 = 「次期以降に提供を受けるサービスの対価」 という面で見れば、3番目の仕訳方法が一番適切、かつ一番効率的な仕訳だと思います ^^

そして!

当期の決算時点で「前払費用」として計上されていた費用は、次期(翌年度)の期首において経費に振り替える必要があります!

当期から見れば「前払費用」になっている費用も、次期になれば「当期の費用(経費)」になってしまいますので、

前払費用を経費に振り替える仕訳が必要なんですね〜 ^^

 次期(翌年度)の期首(1月1日)において

借方 貸方 摘要
損害保険料 前払費用 ---

前期(前年度)にて「前払費用」へ計上されていた費用を、この仕訳で経費に振り替えます。

なお、

これら仕訳等(仕訳例や前払費用の考え方など)に関しましては、会計上の「原則的(企業会計原則による正規な簿記)」な仕訳や考え方となりますが、

ただ、費用の発生が定期的、かつ継続的であり〜 また一定期間内に役務の提供が完結するようなサービス対価や、【⇒ 例 (自動車保険)

定期的、かつ継続的な「固定費」とされる費用などに関しましては・・・ 【⇒ 地代家賃など】

それら費用が「前払費用」であったとしても、一貫性の原則を厳守する事などにより〜

支払い時などに、前払費用を立てずに即・全額必要経費化する事も可能とされておりますので、

※ これらはいわゆる ”特例”です。 詳しく言えば・・・ 企業会計原則の「重要性の原則」を適用した簡略的な簿記という事です。【⇒ 重要性って?】。

 ちなみに、これら特例を「家賃」の仕訳で例えるなら・・・

12月に支払った翌1月分の家賃を、正規な簿記にて仕訳した場合↓(複数あるパターンの一例です))
借方 / 貸方
前払費用 / 現金

 これが・・・

12月に支払った翌1月分の家賃を ”特例”(簡略的な簿記) にて仕訳した場合
借方 / 貸方
地代家賃 / 現金

 こういった仕訳でよくなると。

(もちろん決算時においても、前払費用へ振り替えるなどの処理は不要です)

(保険の場合のパターンは〜 ⇒ 短期前払費用の特例 こちらにて)

これら予め参考までに。

とまあ大変長々となってしまいましたが、

以上参考までに m(_ _)m


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