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LAST UPDATE: 2015/5

消費税の課税方式/簡易課税制度

消費税の会計実務は 「本則課税(原則課税)」が原則。 しかし一定の条件を満たす事業者の方には 「簡易課税制度」と呼ばれるものも用意されており、ちなみにこの ”簡易” という言葉の持つ意味合いは管理や実務が簡単というわけではなく、納税額の計算がただ簡易的というだけで、何かしらの手抜きが出来る事とは全く異なることにはご留意願います。 (※ 財務省HPとかを始め、簡易課税制度は事務負担の軽減うんぬんと解説しているものも多く見かけますが、しかし実際には事務負担はそれほど軽減されるわけでもなく、しかも業種によってはこちらの方が手間、、 という事もあり、まあいずれにしても手抜きを目的として当制度を考えない方がよろしいかと。 (経験者談))

簡易課税制度とは?

売上げなどで預かった消費税のみから、「みなし仕入率」という掛け率を用い--- それを経費などとして支払った消費税と考え税額の申告&納税を行う制度のこと。 (必要なのは預り消費税のみ。 支払った消費税は実集計しないで、預かった消費税に 「みなし仕入率」を掛けて算出した金額を 「支払った消費税(支払い消費税)」として計算してしまう方法。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm (国税庁HPより)。 ちなみにこの制度は申告時の方式であるため、日頃の帳簿付け時など確定申告時以外には特に気にする必要はないでしょう(ただ義務ではないが、複雑な事業や複数の事業を営んでいる方の場合には、一応帳簿付けの時から管理しておくべき事項はアリ))

但し、支払った消費税は実集計しないで、、 とは言っても、帳簿で仕訳など(税抜き処理とか)はやらなくてもいい--- というわけではない事にはご留意願います。

 みなし仕入率とは

まあ簡単に言えば、その業種を広く一般平均で見た場合、売上げに対し仕入れ(経費なども含む)はどれくらいの割合いなのか〜 といった独自値みたいなもので、この仕入率が高いほど利益率が低いと考えられ、相応預り消費税も少なく見積もられ(それだけ多く消費税も支払っていると扱われる)、逆に仕入率が低いほど預り消費税も多く見積もられる、、 と。 (この業種ならこのくらいの仕入れや経費が掛かっていると思われるので、売上げから差し引き 消費税もこのくらい上がっているだろう、、 みたいな)

まあ納税すべき消費税額のどんぶり勘定指数みたいな感じかな(仕入控除額のどんぶり指数)。

 簡易課税制度のメリット/デメリット

ポイント1: 仕入率は現在のところ6区分のみ(H27/4〜)。 いずれか自身の業種等に当てはまる率をチョイスするという仕組み。 但しこれら区分は複雑な事業内容や複数の事業を手掛ける人だとそれぞれに分ける必要があるため(基本的にはひとつの取引き毎に区分する必要あり)、日頃の帳簿付け管理から意外な負担も(例えば自動車販売業だと、自動車の販売と修理とではそれぞれ業種区分が異なるため、帳簿管理(国税庁HP)はもちろんのこと、申告時にはこれら区分毎に分けた複雑な計算の要求も。 ちなみに帳簿管理(国税庁HP)は義務ではないが、その場合には事業区分毎の細かいみなし仕入率が使えず、高いみなし仕入率が適用される事業区分のある方だと納税額が割増しになってしまう事も(事業区分をしていない場合の取扱い))。

ポイント2: 事業区分が6区分それぞれ定率ということは、、 その事業者や経営手法などによっては、簡易課税制度をチョイスする事によって大きな ”トク(利益)” が得られる事もあるでしょう(例えば主要なサービス業だとみなし仕入率は50%だが、しかし同じサービス業でも経費や仕入れをほとんど要せず 本則課税だとおおよそ30%相当の仕入率しかない、、 と言った場合には、簡易課税にする事によって仕入率を20%ほどかさ増し出来 → その分多く控除が出来る → 本則課税に比べ納める消費税が少なくて済む)。 【→ 理屈

但し、こういった損得勘定を品定めするには 過去の経営状況を十分に考慮・把握し かなり精度高い予測によって決定する必要がある事と(簡易課税は事前の届出が必須となっているため、事業途中で都合が悪くなったとしても取り止めがきかない)、一旦簡易課税を選択すると2年間継続しなければならない義務もあるので、年度によって仕入れや経費が大きく変動する場合にもかなり見極めが難しい事も(つまりトクする場合がある反面、あまりよく考えずに選択してしまうと大きく損してしまう(本則課税に比べ多く納税しなくてはならなくなる)リスクもある--- と)。

ポイント3: 複雑な事業内容や複数の事業を手掛ける人の場合には、その損得勘定は上記単純なもののみに限定されず、申告時のさらなる複雑な特例(国税庁より)などによっても損得勘定が細分化されてしまうため、そこら辺りも見極めにかなり高度なモノが必要となるでしょう(どの計算方式を採用する・出来るかによって納税額が異なってきます)。 ちなみに手書きでの確定申告を主としている人だと、ここら辺りでミスして損をしてしまう事も(複数のパターンを採用可能な場合だと、それぞれ計算して 最も有利な方法で申告は出来るが、しかし根本的に計算ミスなどしていれば。。 (→ なおこの辺りにつきましては、e-Tax申告だと自動計算してくれるので、オトクのチョイス・ミスは皆無かと))。

まあ大雑把に書くとこんな感じかな。

  これら簡易課税制度についての国税庁HPよりの関連ページ一覧。
 @https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm (事業区分)
 Ahttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/01.htm (制度のより詳細)
 Bhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm (複数の事業区分のある方の控除計算(みなし仕入率の使い方))

簡易課税制度を採用したい場合

と、これら簡易課税制度をご理解された上で、もしこの制度を採用されたい場合には---

「簡易課税」を適用とする事業年度の初日の前日までに(簡易課税を適用したい事業年度が27年であれば、事業年度の初日(27年1月1日)の前日、、 26年12月31日までにという事)、所轄の税務署長へ 「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すればOK。 (提出必須。 もし提出しなかった、もしくは提出できなかった場合には本則課税

  「消費税簡易課税制度選択届出書」 (国税庁HP)
 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_13.htm

簡易課税制度の注意点

先述にて出て来たデメリットに類するものもあるかもしれませんが、最後に当制度の注意点についても触れておこうかと。

 取り止めるにも届出要

簡易課税を選択した場合には、その後一旦は免税事業者になったとしても、選択を取り消さない限り以後の消費税の納付額の計算も 「簡易課税」が続行適用となります。 なのでもしこの簡易課税を取りやめようという事業者は、その簡易課税を取りやめようとする事業年度の初日の前日までに、所轄の税務署長へ 「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければいけません。

  「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」 (国税庁HP)
 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_14.htm

但しっ! 一度 「簡易課税」を選択した場合には、2年間継続して 「簡易課税」を採用した後でないと取りやめる事は出来ませんので、その辺りに関しましても予めご留意などのほどを。

 適用不可。除外など

上記の手続きで 「簡易課税」を選択していても、基準期間の課税売上が5,000万円を超えるその課税期間においては、これら 「簡易課税」ではなく本則課税が適用されます事にはご留意願います。(例えば平成24年度の課税売上が5,000万円超であれば、平成26年度においては必然的に本則課税が適用される、、 と。 但し、以後の基準期間において5,000万円以下となった場合には、再び簡易課税の効力が戻って来ますことにもご留意願います (基準期間、及び 課税期間とは))

またこれらに関連して、おそらく出して出せないことはないとは思われますが、この簡易課税適用の届出は一般的に基準期間が5,000万円以下となる課税期間に対し(そのタイミングに)出すものとされておりますので、それら辺りにも一応予め。

ちなみに、これら以外にもまだまだ制度の適用(選択)には不可/除外(制限)されるなど一定条件なども御座いますので〜 (例: 国税庁PDF https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/h22kaitei.pdf) これらにつきましても予めご注意のほどを。

 還付となる場合には絶対的不利

勘の鋭い方ならもう既にお気づきかもしれませんが、簡易課税制度は 預り消費税にみなし仕入率を掛け仕入控除税額を算出しようというもの。 という事は!? どんな状況下においても預り消費税はマイナスになる事はありません。 つまり--- 本則課税であったなら還付が受けられていたはずなパターンでも、簡易課税なら還付どころか強制的に納税が発生、、 という事も。 【→ 理屈

というわけで消費税の還付が受けられそう、、 と言った場合では、当制度のチョイスは慎重に(一応全てにおいて絶対不可、、 という事はないとも聞きますが、ただそれは一般的ではないかなり希少パターンでしかなく、まあいずれにしても還付を受けようと思った場合にはほぼ簡易課税は不利であると考えられておいて下さい)。

とまあ今回少々記事が長くなってしまいましたが、以上参考などなる部位御座いましたら幸いです。


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