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家庭用のものを事業用へ転用した償却資産

個人事業をやっていると、家庭用に使っていた備品を事業用に転用するって事はけっこうありますよね〜 ^^

自宅で使っていたパソコンを事業専用にしたり、自家用車を営業車に転用したり・・・。

パソコンや自動車など・・・ まあ今まで家庭用で使っていた資産を事業用に〜 という場合には、減価償却など経費計上上色々とお決まり事も多く。。。

まあとりあえずこのページでは、家庭用として購入し使っていた償却資産を事業用へと転用した場合の、経費計上の仕方などについて触れておきましょうか ^^

※ なおここで言う償却資産とは・・・ その資産の金額に関係なく、「法定耐用年数」が付加されている資産の事を言い、いわゆる 「消耗品」を除く備品などの事を指します。

未償却残高

先ずは、事業用に転用する資産(減価償却資産など)の未償却残高(帳簿上で言う時価値)を算出します。(事業用に転用する地点は、あくまでも「事業の用に供した日」です)

パソコンや自動車などの固定資産は、使った分ずつ(経年・使用)資産の価値が下がっていきますので、事業用の資産として計上する前に、家庭用として使われていた期間に価値が下がった 「減価の額(事業用として使われていなかった期間の減価償却費相当額)」 を差し引いてやらなければいけません。

ちなみにその未償却残高は、資産購入時の価額から「減価の額」を差し引いた額。

未償却残高 = 資産の取得価額(購入した時の価額) − 減価の額

そしてこの額を元に、必要あれば事業の用に供した日から減価償却等を行うことになります。

「減価の額」の算出

「減価の額」? 何それ?

「事業用として使われていなかった期間(家庭用として使っていた期間)の減価償却費相当額」? どうやって計算するの??

減価の額 = 事業用として使われていなかった期間につき、耐用年数の1.5倍に相当する年数で、旧定額法に準じて計算された数値。

???

 「事業用として使われていなかった期間につき」

事業用として使っていなかった年数分を掛ける・・・という意味です。

ちなみに、6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は繰り上げて「1年」で計算します。

事業用で使っていなかった期間が1年8ヶ月であれば「2年」として計算します。

 「耐用年数の1.5倍に相当する年数で」

なんとなく分かりそうですね〜。

転用する資産が該当する「耐用年数」の1.5倍の年数を使って・・・という意味です。

もともと取得した資産が新品であれば、資産の耐用年数は「法定耐用年数」になりますので、「法定耐用年数 × 1.5」という事です。

※ 1.5倍した年数に1年未満の端数がある場合には、1年未満の端数は切り捨てします。

ちなみに国税庁の決算の留意事項情報によれば、1.5倍するのは「法定耐用年数」ではなく「耐用年数」と記載されている事から、、

取得した資産が「中古資産」だった場合には、中古資産の減価償却による耐用年数を採用するものと思われます。

※ 尚、ここらあたりまで細かい部分となると、国税庁含む、関連する書籍や具体的なガイドラインなども無いと思われますので・・・ まあ実際に算出される各事業主様の考える 「合理的」、かつ 「理にかなった」考えを採用されても問題ないと思われます。【⇒ 関連・近似する考え方

 但し! もちろんその考え方を採用するからには、それなりの根拠や、税務署側を納得させられるだけの証拠や事由有る事が前提とはなりますが・・・


 つまり〜 根拠など、合理的で適正で、かつ理にかなった考えであれば、例えその資産が 「中古品」だとしても、新品資産と同様に 「法定耐用年数」を採用した算出基準を採用しても問題ない・・・ と、そいう感じかな。。。【⇒ 関連・近似する考え方

 実際に、中古品の事業転用において税務署へ直接相談してみたところ・・

 新品時と同様の 「法定耐用年数 × 1.5」の方を採用した 「減価の額」の計算でも、全く問われる事もなかった・・・ といった実例も一応。。(但しこの場合、登録からわずか数か月程度の 「新古車」だったので、ひょっとしたらその辺り(資産と計算方法)の何処かが 「理にかなっている」と判断された結果なのかもしれませんが。。)

 「旧定額法に準じて計算された数値」

ここはかなり重要な部分です ^-^)/

旧定額法」・・・という事で、計算式のベースは「旧定額法」になります。

「旧定額法」は、平成19年3月31日以前に取得(購入)された資産が対象となっていますが、「減価の額」を算出する場合に限っては、平成19年4月1日以降に取得された資産であってもこの「旧定額法」をベースに計算するという事です。

・・・とまあこんな感じなんですが、イマイチしっくり来ませんね〜 ^^

これだけではちょっと分かり難いと思いますから、実際の例題で「減価の額」を算出してみましょうか。

例) 平成19年8月に、当時25万円で新品購入(取得)したパソコンを、平成20年5月より事業用へ転用しました。 さてこの資産の「減価の額」は? 転用時の「未償却残高」は?

先ずは「事業用に使われていなかった期間」。

平成19年8月から平成20年4月までですから ⇒ 9ヶ月。

6ヶ月以上は繰り上げしますので、事業用に使われていなかった期間は「1年」ですね〜 ^^

お次は「耐用年数の1.5倍に相当する年数」。

パソコンの法定耐用年数は「4年」ですから、「4 × 1.5 = 6」で、「6年」です。(2018年現在)

なお耐用年数は、最新のものを適用するのが妥当でしょう。(購入当時の耐用年数ではなく)

そして決め手は「旧定額法」!

旧定額法は・・・「資産の取得価額 × 90% ×旧定額法の償却率」。

資産の取得価額 ・・・ 25万円。

旧定額法の耐用年数6年)の償却率()は ・・・ 0.166

 ここで1.5倍に相当する年数を耐用年数とします。

 旧定額法の償却率は・・・https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2018/pdf/016.pdf (国税庁資料より。5ページ目参照)

後は、「旧定額法」をベースに計算するのみ!

250,000円 × 90% × 0.166 × 1年 = 37,350円

出ました ^^

37,350円。

これが事業用に使われていなかった期間の「減価の額」です。

つまり、これが家庭用として使っていた間に償却された「下がった資産の価値分」です。

少し余談になりますが、

取得から6ヶ月未満の事業用への転用は、資産購入時の取得価額の全額が減価償却資産として計上出来ますね〜。

「事業用に使われていなかった期間」の計算で、6ヶ月未満は切り捨て・・・という事なので、資産購入から6ヶ月未満の事業用への転用は「減価の額」が0円となり、取得価額の全額が未償却残高となりますからね〜 ^^

※ つまり新品と同等の扱いになるというわけ。

「未償却残高」の算出

「減価の額」が出た所で、念のため「未償却残高」も上記例題に沿って算出してみましょうか。

未償却残高の計算式。覚えていますか〜?

未償却残高 = 資産の取得価額(購入した時の価額) − 減価の額

という事で、改めて計算式に当てはめてみると・・・

250,000円 −37,350円 = 212,650円

出ました! \(^。^)/

「212,650円」。 これが未償却残高です!

転用後の経理処理。(帳簿・仕訳・減価償却等)

未償却残高は転用時の資産価値。

後はこれをベースに帳簿などへ記帳・仕訳して行くわけですが、、

ただここから先につきましては、その資産の「購入時の取得価額」によって経理処理は異なってまいりますので、

予めご注意のほどを m(_ _)m

※ なお、選択肢の基準はあくまで「購入時の取得価額」です。事業転用時の未償却残高ではありません。こちらもご注意を。

 その1. 取得価額が10万円以上となる資産

この場合は「減価償却資産」として取扱います。

つまりその転用資産を経費計上していくには減価償却が必須! というわけで。。

ちなみに、ここから先の減価償却はごく普通のものです。(最初から事業用として買った資産と同じ扱い)

未償却残高が1円になるまで、いつも通りの減価償却だったりします。

但し! 未償却残高のみ、これまで上記で計算してきたものを使います。(ここで言う未償却残高が、帳簿価額(資産として計上される価額)というわけ)

例えば、これまで上記で例題に出てきた「25万円のパソコン」を例に説明していくと。。

先ずは転用時の仕訳から。

借方 貸方 摘要
器具工具備品 212,650 事業主借 212,650 ---

こんな感じですね。

そして決算時。 減価償却費へ振りかえて行く際は---

<<< 定額法のケース >>>

初年度。

@250,000円(資産の取得価額) × A0.25(償却率) = 62,500円(減価償却費)

 耐用年数は法定耐用年数の「4年」なので、償却率は「0.25」。(定額法適用)
借方 貸方 摘要
減価償却費 62,500 器具工具備品 62,500 ---

※ 翌年へ繰り越す未償却残高 = 150,150円。 (212,650 - 62,500 = 150,150円)

ん? 何かおかしくね?

おそらくここで疑問が出てくるでしょう。

でもこれでいいんです。

@ 未償却残高の計算で出てきた「212,650円」は資産の取得価額ではありません。あくまで購入時の価額25万円が「資産の取得価額」になります。 ゆえ償却算出時にはもともとの購入時の取得価額250,000円が式に当てはまることに。。

A 取得時は新品。かつ転用時には既に家庭使用分の償却がされておりますので、、 残った未償却残高は新品と同様の扱いで償却して行きます。(なので法定耐用年数を使用)


 「償却率」は事業使用での耐用年数(法定耐用年数)なので、「減価の額」で計算した償却率と混同しないように気をつけましょう〜 ^^

 耐用年数は最新のものをご使用ください。

 
 ※ 尚、その資産の取得日が平成19年3月以前であったなら(例えば19年1月とか)、ここで適用する定額法は「旧定額法」となります。(⇒ 旧定額法) ちなみにその取得日は、あくまでその資産を取得した日であって、事業用へ転用した日ではない事にもご留意を。

 ※ 「減価の額」を算出する際に使用した「旧定額法」は、あくまでその「減価の額」の算出時のみの基準です。事業用へ転用された後の減価償却は、通常通りの規定に従って適用判断されてください。

翌年以降は---

2年目) 250,000円 × 0.25 = 62,500円

借方 貸方 摘要
減価償却費 62,500 器具工具備品 62,500 ---

※ 翌年へ繰り越す未償却残高 = 87,650円。 (150,150 - 62,500 = 87,650円)

3年目) 250,000円 × 0.25 = 62,500円

借方 貸方 摘要
減価償却費 62,500 器具工具備品 62,500 ---

※ 翌年へ繰り越す未償却残高 = 25,150円。 (87,650 - 62,500 = 25,150円)

4年目) 25,150円 − 1円 = 25,149円 (62,500円に満たないため)

借方 貸方 摘要
減価償却費 25,149 器具工具備品 25,149 ---

※ 翌年へ繰り越す未償却残高 = 1円

ここで事業用へ転用後の「未償却残高」が1円になりましたので〜

減価償却も終了です。

お疲れ様でした ^^

<<< 定率法のケース >>>

例の如く、ここでも定率法の償却方法は省略させて頂きます〜 m(_ _)m

<<< 補足 >>>


Q. ”一括償却資産” や ”特例” で償却できる?

A. 未償却残高(事業用としての転用時の資産価値)にさえ気をつければ、(最終的にその資産価値分を上限に費用算入になっていれば) またもともとの新規取得時の基準にさえ気をつければ、(特例等の対象になるか否かなど) 理論上は問題ないでしょう。(最終的に税額が適正と考えられれば、国税側としては何ら文句はないでしょう)

 根拠: これらどちらも中古取得した資産も対象となっているため。

一括償却資産は、未償却残高を均等償却。(ただ適用可否の判断は新規取得時の価額を基準に)

特例(少額減価償却資産の特例)は、新規取得時の価額を基準に判断。

ここら辺りが妥当で無難なのでは?

ただこれらに関しましては、該当する資料など見当たらず、、 あくまで個人主観的な意見となりますので、確実な情報を得ようと思われます場合には、所轄の税務署などへご相談願います。(ただ相談されても、おそらくかなり曖昧な回答しか返ってこないかと思われます。税務署側はあくまで税額が適正か否かを基準としますので、会計方法まではあまり。。)


Q. もしその転用した資産が、購入当時から「中古品」であったなら?(家庭用として中古車を購入していた。とか)(定額法を前提)

A. 転用時の未償却残高につきましては、こちらの耐用年数に注意すれば、後は新品と同じ扱いで未償却残高を算出します。

※ 耐用年数の算出時、家庭用として取得された時点は、購入日で考えても問題はないかと思われます。

尚、転用後の減価償却に関しましては〜

やはり中古品であるがゆえに、中古資産の減価償却に準ずる減価償却となります事にご留意ください。

※ 「資産の取得価額」や「未償却残高」の考え方は上記例の新品時例と同じく考えますが、ただ・・・ 償却に関する耐用年数などのみ、中古資産としての見積耐用年数・償却率 (つまり簡便法による耐用年数・償却率)を用いての償却となります事にご留意を。

 その2. 取得価額が10万円未満となる資産

この場合、その資産は「少額な減価償却資産」という位置づけとなり・・・

その転用資産を経費計上していくには〜 転用時の一括経費化が基本となるでしょう。

※ 尚、こちらのパターンに関しましては、ややグレーゾーン的な部分も御座いますので〜 これら予めご留意願います m(_ _)m 【注意 ⇒ 取得価額が10万円未満の資産を、事業用へ転用した場合の見解

つまり、

上記「未償却残高」を、事業転用時(事業の用に供した日)において・・・消耗品費など費用の勘定科目を用いて必要経費へと計上処理し、全額その当該年度の必要経費とする事が出来ます。 という事ですね ^^

尚、転用時の仕訳につきましては〜

借方 貸方 摘要
消耗品費 12,650 事業主借 12,650 ---

こんな感じになろうかと。


 『 ちょっと予備知識 』

 ローンが残っている資産を事業用へ転用した場合、ローンの金利手数料は経費になりますよ〜 ^^

 ※ 詳しくは ・・・ 「ローンが残っている車を事業用へ転用

以上、皆様のご参考になれば幸いです。


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